読書日記【028】翻訳して届けてくる
喉が渇き、夜更け、自動販売機を探し歩く。大通りの灯りが次々と消え、24時間営業のコインランドリーの明るさだけが街に残る。店内で漫画雑誌を読み耽る男が一人。
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ちょうどいま夕立ちが降っている。
これだけ雨の多い国で暮らしてきて、雨音を、「雨」が物体を打つ音としてではなく、雨に打たれた「物体」が届ける音だと、そんな風に考えたことは一度もなかった。主役を「雨」から「物体」に、その主客転倒の発想に目が開かれる思いがする。
その音を「翻訳」とするのもよい。私たちが言葉で会話するように、世界中のあらゆる物が響き合っていることを思い出させる。
この発想を音以外にも応用したい。例えば太陽に光輝く色とりどりの花々は、太陽の光が花々を照らす結果であると同時に、花々が翻訳して届けてくれる多種多様な光でもある、と。
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とうもろこしを茹でて食べる。美味しいのだが、鍋で茹でると部屋が蒸し暑くなる。一本のとうもろこしを半分に折り、片方は明日に回そうとしたが、結局もう片方もすぐに食べた。
2022/07/11(月)