読書日記【005】散歩

快晴。午後の陽射しは私たちの体をじんわりと暖めるが、通りを吹き抜ける風は冷たい。日沈のあとはきっと寒くなるはず。閑古鳥だった定食屋が観光客で満員。

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でも、ああ神さま、もう十分です、僕は出かけなくてはなりません、世界の中へ飛び込んでいかねばなりません、もう我慢できません、僕は誰かの顔に思いっきり笑いかけに行きたい、散歩に出かけないではいられないのです。ああ、生きるっていうのは、すてきだ、ほんとうにすてきだ。

ローベルト・ヴァルザー(著)「大都市の通り」より

最後に誰かの顔に思いっきり笑いかけに行ったのはいつだろうか……。しかし散歩はしている。日記を見返す限り、昨年のゴールデンウィークも散歩くらいしかしてない。

散歩すると発見がある。公園のそばの空き地に家が建ち始めているとか、街で一番大きな桜の木の花びらが全部散ったとか、工務店の軒下に燕の巣が作られたとか。近所に未知の世界が広がっている。

試しに家から最寄りの駅までの地図を、記憶だけを頼りに紙に書いてみる。すると、見慣れたはずの景色について、ほとんどのことを記憶してないし、知ろうとさえしてこなかったことに気付かされる。

隣の家の屋根は何色だった?
公園の植木に咲いている花は何の花?
いつも渡る橋の名前は?

確かめたくなり、散歩に行きたくなる。

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味噌専門店で飲んだベーコンと春菊の味噌スープが美味しかったので、その店で同じ琉球味噌を買い、同じものを見様見真似で作ってみた。ふつうの味噌汁ができた。

2022/04/30(土)