読書日記【011】素晴らしい連帯

しとしとふる雨。晩から明朝にかけて強風警報発令。これから強風で雨が激しくなるのかと思うと、ポストに手紙を投函しに家を出る気が失せる。結局、外出せず。

画像

***

エドヴィッジと彼、ふたりは一度も互いに理解し合ったことがなかったが、しかしいつも意見が一致した。それぞれ勝手に相手の言葉を解釈したので、ふたりのあいだには、素晴らしい調和があった。無理解に基づいた素晴らしい連帯があった。彼はよくそれを知り、ほとんどそれを楽しんでいたのだった。

ミラン・クンデラ (著), 西永 良成 (翻訳)『笑いと忘却の書』集英社,p.371

すれ違うことが幸福なこともある。夏目漱石の『道草』の主人公夫婦はよくしょうもない喧嘩をする。お互い相手のことを理解していないからではなく、よくよく理解しているために諍う。口論は堂々巡り……。そのことを思い出した。

相互理解があれば問題が解決するわけではないし、その裏もしかり。言われてみればそのとおりなのだが、はっとさせられたのは、《相手と理解しあえないことは悲しいことだ》という思い込みが強すぎたせいかもしれない。

***

夜、風呂場から家族の鼻唄が聴こえてこないことに気づいたときと、朝、ラジオの音声が流れっぱなしのまま目が覚めたとき、独りだなあと感じる。

2022/05/13(金)